探偵とは?仕事内容・できること・できないこと・依頼前の確認事項を解説
探偵というと、ドラマや小説に登場する人物を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際の探偵は、事件を推理して犯人を逮捕する仕事ではありません。
日本の探偵は、依頼を受けて特定の人の所在や行動について調べ、結果を依頼者へ報告する事業者です。浮気調査、素行調査、人探しなどが代表的ですが、警察と同じ権限が与えられているわけではなく、どのような依頼でも受けられるわけではありません。
「自分の悩みは探偵へ相談する内容なのか」「相談すると、どこまで調べてもらえるのか」と迷っている人もいるでしょう。
この記事では、探偵業法における探偵の位置づけ、主な仕事内容、できないこと、料金の決まり方、相談・契約前に確認したい事項を解説します。
探偵とは、依頼を受けて人の所在や行動を調査する事業者
探偵業法における探偵業務の定義を簡単に整理すると、次のようになります。
他人から依頼を受け、特定の人の所在または行動に関する情報を集めるため、聞き込み、尾行、張り込みなどによる実地調査を行い、その結果を依頼者へ報告する業務
探偵の仕事は、大きく次の3段階に分かれます。
- 依頼者から調べたい目的や現在分かっている情報を聞く
- 聞き込み、尾行、張り込みなどを用いて実地調査を行う
- 調査で確認した事実を報告書などにまとめて依頼者へ伝える
探偵は、警察のように捜査権を持つ機関ではありません。逮捕、家宅捜索、強制的な事情聴取などはできず、一般の人と同じく法律を守って調査する必要があります。
探偵と興信所に法律上の明確な違いはない
探偵と似た名称に「興信所」があります。
かつては、探偵が個人の行動調査、興信所が企業や取引先の信用調査を中心に扱うという傾向がありました。しかし現在は、名称だけで業務内容を明確に分けることはできません。
「探偵事務所」「探偵社」「興信所」のどの名称を使用していても、探偵業法に定められた探偵業務を営業として行う場合は届出が必要です。
依頼先を決めるときは名称ではなく、相談したい調査を扱っているか、調査方法や料金について具体的な説明があるかを見極めましょう。
探偵になるための国家資格はない
日本には、探偵になるための国家資格や国家試験はありません。探偵社に調査員として採用され、社内教育を受けて仕事を始めるケースもあります。
ただし、「資格がないから誰でも自由に営業できる」という意味ではありません。
探偵業を営む事業者は、営業を開始する前に、営業所を管轄する都道府県公安委員会へ届出を行う必要があります。届出は営業所ごとに行います。
また、探偵業者には、従業者への教育、業務で知った秘密の保持、契約時の書面交付などが義務づけられています。
探偵業は許可制・認可制ではなく届出制
探偵業について「公安委員会から許可や認可を受けている」と説明されることがありますが、正確には届出制です。
公安委員会へ届出をしていることは、法律上営業するために必要な条件です。しかし、届出が受理されているだけで、調査力、料金の妥当性、対応の良さまで保証されるわけではありません。
現在は「探偵業届出証明書」ではなく標識を確認する
2024年4月1日の制度変更により、公安委員会が交付していた探偵業届出証明書は廃止されました。現在は、探偵業者が自ら作成した「標識」を営業所の見やすい場所に掲示します。
原則として、事業者のウェブサイトにも標識を掲示する必要があります。ただし、常時使用する従業者が5人以下である場合など、ウェブサイトへの掲示義務に例外があります。
サイトに標識が見当たらないことだけで未届業者と断定はできません。相談時に営業所の標識を見せてもらい、不安があれば営業所を管轄する警察へ問い合わせる方法があります。
探偵の主な仕事内容
探偵社によって対応分野は異なります。ここでは、一般的に相談されることがある調査を紹介します。
浮気・不倫調査
パートナーの行動を尾行や張り込みによって確認し、いつ、どこで、誰と行動していたかを記録する調査です。写真や動画、時系列の記録をまとめた調査報告書が作成されることもあります。
「浮気していると思う」と伝えるだけで必ず証拠が得られるわけではありません。対象者が行動する曜日や時間を絞れているか、移動手段は何か、どの程度の調査が必要かによって、方法や費用が変わります。
例えば、「毎週金曜日だけ帰宅が遅い」「以前はなかった休日出勤が続いている」といった情報があれば、調査する日時を検討する材料になります。
素行・行動調査
特定の人が普段どのような場所へ行き、誰と会っているかなど、一定期間の行動を確認する調査です。
家族や交際相手に関する相談のほか、依頼目的に問題がなく、法令に反しない範囲で行われます。相手を支配する目的や、嫌がらせなどに利用されるおそれがある依頼は受けられません。
人探し・所在調査
連絡が取れなくなった家族、知人などの所在について調べる業務です。最後に確認された場所、連絡が途絶えた時期、過去の住所や勤務先など、依頼時の情報量によって調査方法や難易度が変わります。
家出人に事件や事故、自傷などの危険が考えられる場合は、探偵を探す前に警察へ相談してください。また、相手が配偶者からの暴力やストーカー行為を避けるために所在を隠している可能性がある場合など、依頼目的によっては調査を断られることがあります。
結婚前の調査
結婚を考えている相手の申告内容や生活状況について、依頼目的と法令の範囲内で確認する調査です。
ただし、違法な差別的取り扱いを目的とする調査や、調査結果がそのような目的に利用されるおそれがある依頼は受けられません。何を不安に感じ、何を確認したいのかを相談時に具体的に伝える必要があります。
企業に関する調査
取引先の実態確認や、社内不正の事実確認などを扱う探偵社もあります。公開情報の確認に加え、聞き込みや現地確認などが行われる場合があります。
企業調査を取り扱っていない探偵社もあるため、相談したい内容に対応しているか事前に尋ねておきましょう。
盗聴器・盗撮機器の発見調査
自宅や事務所に不審な機器がないか、専用機材を用いて確認する調査です。発見後の取り外しや警察への相談について、どこまで対応するかは事業者によって異なります。
機器を発見したときは、証拠を失う可能性があるため、慌てて触ったり処分したりせず、警察や適切な専門家への相談を検討してください。
探偵にできないこと
探偵へ依頼すると、専門的な調査技術を使って何でも調べられると思うかもしれません。しかし、探偵業の届出によって特別な捜査権限が与えられるわけではありません。
探偵には、次のようなことはできません。
- 対象者を逮捕したり、強制的に話を聞いたりする
- 他人の住居や敷地へ無断で侵入する
- 他人のスマホやアカウントへ不正にアクセスする
- 違法な方法で個人情報を取得する
- 調査対象者を脅したり、交際や退職などを強要したりする
- 依頼者の代理人として慰謝料や返金の交渉をする
- 犯罪、ストーカー行為、違法な差別につながる目的の調査を行う
探偵が依頼者の代理人として相手と交渉したり、慰謝料や返金を請求したりすることはできません。代理交渉や法的な手続きを依頼したい場合は、弁護士へ相談します。探偵社が「被害金を必ず取り戻す」「相手と交渉する」と説明した場合は、その場で契約しない方がよいでしょう。
身の危険がある場合は警察、法的な判断や交渉が必要な場合は弁護士など、目的に合った窓口へ相談してください。
探偵の調査料金はどのように決まるのか
探偵の調査料金は、依頼内容だけで一律に決まるものではありません。主に次の条件が影響します。
- 調査員の人数
- 調査する時間と日数
- 対象者の移動手段
- 調査する地域と移動距離
- 車両や撮影機材の使用
- 交通費、宿泊費などの実費
- 調査報告書の作成費
- 延長やキャンセルの条件
例えば浮気調査では、怪しい日時を絞れている場合と、行動する日がまったく分からない場合で、必要な調査時間が変わります。
料金体系には時間制、一定時間をまとめたパック制、成功報酬制などがあります。ただし、同じ名称でも、含まれる費用や「成功」の定義は探偵社ごとに異なります。
基本料金だけで判断せず、実費や追加料金を含む総額、延長料金、キャンセル料、成功条件まで書面に記載してもらいましょう。
探偵へ相談する前に整理しておきたいこと
相談の段階ですべての情報がそろっている必要はありません。ただし、分かる範囲で次の内容を整理しておくと、調査が可能か、どのような方法が考えられるかを説明してもらいやすくなります。
- 誰について、何を確認したいのか
- 気になる出来事が起きた日時
- 対象者の普段の生活リズムと移動手段
- 自分が直接確認した事実
- まだ確認できていない推測
- 調査結果を知った後にどうしたいか
- 調査に使える予算
特に、「確認できた事実」と「自分の推測」を分けることが大切です。
まだ一度だけ違和感があった段階なら、すぐに調査を契約せず、出来事を記録しながら様子を見る方法もあります。一方、行動する曜日や時間がある程度分かっている場合は、調査できる状況か相談してみる選択肢があります。
探偵社を選ぶときの確認事項
探偵業の届出は最低限の確認事項ですが、届出だけで依頼先を決めることはできません。
相談や面談では、次の点を確認しましょう。
- 調査の目的に合った方法を具体的に説明しているか
- 調査員の人数と予定時間が明確か
- 追加費用を含む見積もりの総額が分かるか
- 成功報酬の場合、成功条件が書面に記載されているか
- 中途解約やキャンセルの条件を確認できるか
- 調査報告書の見本を確認できるか
- 質問や持ち帰りを急かさずに認めているか
探偵業者は契約前に重要事項を書面で説明し、契約後にも契約内容を明らかにする書面を交付する必要があります。
国民生活センターも、複数の事業者から見積もりを取り、調査方法、料金の内訳、キャンセル料などについて説明を受けて比較するよう案内しています。
相談した当日に契約する必要はありません。見積書と契約書を持ち帰り、口頭で説明された内容と書面に違いがないか読み返しましょう。
探偵への相談が選択肢になるケース
次のような状況では、調査を契約するか決める前に、探偵へ相談して情報を集める方法があります。
- 自分だけでは対象者の行動を確認することが難しい
- 気になる曜日や時間帯がある程度分かっている
- 尾行や張り込みが必要になりそう
- 客観的な行動記録を残したい
- 調査できる状況か、必要な期間や費用を知りたい
相談と調査契約は別です。説明や見積もりを聞き、今は依頼しないと判断することもできます。
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探偵へ相談する前に、ほかの窓口を優先したいケース
次のような状況では、探偵への依頼よりも、警察や弁護士などへの相談を優先してください。
| 現在の状況 | 主な相談先 |
|---|---|
| 暴力、脅迫、つきまといなどで身に危険がある | 警察や公的な相談窓口 |
| 慰謝料、離婚条件、相手との交渉について相談したい | 弁護士 |
| 詐欺被害の返金交渉や契約解除を依頼したい | 弁護士、消費生活センターなど |
| 不安で眠れず、日常生活へ大きな影響が出ている | 医療機関や適切な相談窓口 |
探偵は事実を調べる役割を担いますが、その後の交渉や心身のケアまで、すべてを解決できるわけではありません。
よくある質問(FAQ)
探偵になるには資格が必要ですか?
探偵になるための国家資格や国家試験はありません。ただし、探偵業を営む事業者は営業所ごとに公安委員会への届出が必要で、従業者への教育も義務づけられています。
探偵は警察のように個人情報を調べられますか?
探偵に警察と同じ捜査権限はありません。聞き込み、尾行、張り込みなどを行う場合も、他の法令や個人の権利を侵害しない範囲に限られます。
探偵へ相談したら契約しなければなりませんか?
相談と調査契約は別です。調査方法や見積もりの説明を聞いた後で、依頼しないと判断しても問題ありません。契約を急かされた場合は、その場で決めずに持ち帰りましょう。
探偵に依頼すれば必ず証拠を得られますか?
必ず得られるとは限りません。対象者が予想した日に行動しない場合や、調査中に目的とする行動が起きない場合もあります。契約前に、何をもって調査完了または成功とするのか説明を受けてください。
探偵の届出番号があれば信頼できますか?
届出番号は法律上営業するための手続きを確認する手がかりですが、調査力や料金の妥当性を保証するものではありません。調査方法、見積もり、追加料金、解約条件、報告書なども併せて比較してください。
まとめ
探偵は、依頼を受け、特定の人の所在や行動について実地調査を行い、結果を依頼者へ報告する事業者です。
浮気調査、素行調査、人探しなどが主な業務ですが、警察のような捜査権限はありません。違法な方法による情報収集、相手との交渉、犯罪や差別につながる目的の調査もできません。
探偵へ相談するときは、何を確認したいのか、その後どうしたいのかを整理しておくことが大切です。契約前には、届出だけでなく、調査方法、料金総額、成功条件、解約条件、報告方法を確認してください。
まだ依頼する段階か分からない場合は、すぐに契約するのではなく、現在の情報でどのような調査が可能かを相談し、説明を聞いてから判断しましょう。
参考情報
※本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の法律問題に対する助言ではありません。具体的な状況については、弁護士などの専門家へご相談ください。

